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マジカルチューニング

Episode 1

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魔女との出会い

 わたし、いじっちゃんが現代の魔女である谷崎榴美さんに出会ったのは、2015年の春だったと記憶しています。

 当時、出版社でインターンをしていた私は、企画書を書く練習という大義名分を掲げて、ただただ面白いと心から思える誰かを探していました。もともと、不思議なことが好きということで、霊媒師の方や、巫女の方、フリーメイソンの方などをネットでひっぱりだしてきては、またストックへ戻してというようなことをしていました。

 そして、ある夜見つけたのが『東京リチュアル』というオカルトユニットでした。そして、そのユニットの1人であったのが現代魔女術実践家である谷崎榴美さんその人だったのです。

 彼女の書いた文章には「魔女のなりかたはググれ!」や「魔女とは世界を多重構造で見ているひと」「魔法とはおままごと」など、こちら側の想像力を試すような言葉がちりばめられ、まるで発光ダイオードのような執拗な存在感を放っていました。

 私にとっての魔女とはこうでした。きっとサンタクロースのような「あると信じていたほうが人生楽しいよね」と大人の対応で押収されてしまう物語の中だけのもの、或いは世界史で出てくる魔女裁判のような異端としての歴史の中に埋没してしまった何か。いずれにせよ、現在の私からはとても遠いもの。

 しかし、パソコンの画面からは挑発的な表情を浮かべる女性が、私をのぞきこんでいました。私と10も年が変わらない日本人で、同じ時代を生きている魔女です。

 私は、すぐさま彼女に連絡をとり、何か一緒に本を作れないだろうかと奮闘しました。その当時は、魔女というとまだまだ怪訝な反応が多く、「ちょっと怖いな」「ちょっと気持ち悪いな」というようなものがほとんどでした。世間の持つネガティブな意識を変える必要があると考え、そこからカジュアルでポップな魔術イベントをいくつか企画しました。文学が好きな人に紹介する時には「かの有名な澁澤龍彦が!」と、さもありがたい風に言葉を始めましたし、映画を好きな人には「ほらほらジャック・リヴェットが!」と、たいして観てもいないのに、無理やり話をこじつけることもありました。当の私は、形容詞も、こじつけも、するすると脱ぎ捨てていく魔女に魅了されたはずなのに!

 結局、その時は榴美さんの結婚妊娠などの時期とも重なり、出版化の話は休止の状態となりましたが、それはちょうど魔女を表現する容器として「本」という形態に疑問を持ち始めた時期でもありました。本は一度、完成を決めてしまわなければなりません。もっと自由で、もっと広大な、どこから始めてもよいし、どこで終わらせてもよい、最後には燃やして暖をとってもいい、そのような異次元の箱のような形態を見つけられないだろうかと思いながらも、榴美さんとは疎遠になっていきました。

魔女との再会

 そして、時は流れ2019年秋。今回、縁があり、ポッドキャストという形で谷崎榴美さんと再会することができました。お母さんになった榴美さんは、声の芯がまぁるくあたたかになったような印象を受けました。

 インタビューをしている時、室内は「魔法はあるんだ、魔女は存在している」というエネルギーに満ちていました。何かに感動した時や、何かを心から面白いと感じる時、私は脳内に閃光や世界と肉薄していく風圧のような体感をおぼえるようです。その体感が、その振動が、皆さんの耳を通じて、新しくまた生まれ直すことに心から喜びを感じます。あなたがこれまでに出会った魔女はどんな魔女ですか?そして、これから出会う魔女はどんな魔女でしょうか。ぜひ、ぜひ最後までお付き合いください。

Episode 1